ごちそうが食べたい。

栄養よりも腹を満たしたい管理栄養士

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【保活】食の安心安全、とは

保活、してます。
もはや説明不要の保活ですが、コロナ禍で今まで通りとはいかない状況が続きます。

保護者として、そして保育園の職員として、思うこと

初めての保活でまさかのイレギュラーと遭遇。といっても妊娠中から覚悟はしてました。いつまで経っても遅々として進まない感染対策、感染拡大に次ぐ再感染、に次ぐ再感染…。今月になってようやく緊急事態宣言が解除されましたが依然として安心できない日々が続きます。

漠然と保活の存在は知っていて、ただ「激戦区」に住む方にとって死活問題である保活という言葉が、それ以外の地域に住む人にまで波及してなんだか得体のしれない怖いものになってしまったように感じます。
幸い「激戦区」と程遠い田舎の我が家。ひとまず近隣の保育園をピックアップし、私の復職後の生活も意識しつつ複数の保育園の見学に行ってきました。


緊急事態宣言が解除された直後に見学させていただいたA園は、風通しの良いテラスから園庭で遊ぶ子どもたちの姿と教室の様子が見られましたが、本来であれば園内設備をもっと詳しく見させていただけたそうです。
その前の緊急事態宣言中に見学をお願いしたB園は、施設内への立ち入りはできませんでしたが、園長先生が丁寧に対応してくださり、年中行事や施設設備、教育方針などについてたくさんお話を聞けました。

もちろん見学を断られることもあり、思い通りに進まない場面もありました。ですが限られた情報の中から希望の園を検討する時間は、大変だというよりむしろ非常にポジティブな体験でした。
ましてコロナ禍でのワンオペ育児で積み重なった閉塞感から解放された時間でした。このような状況で見学を実施してくださる各園の皆さん、本当にありがとうございます。大げさかもしれませんが、インターフォンを鳴らして最初に「こんにちは」とあいさつをしていただける、そんな「家族以外の人間と言葉を交わす」だけで私は救われました。あいさつってすごい。


復職後、栄養士である私が見学者と直接言葉を交わすことはほとんどないのですが、最低限失礼のない対応と笑顔はこれからも続けていきたいです。


とはいえ見学時間はせいぜい30分から長くても1時間程度。これだけの時間で最善の保育園を探すのってほぼ不可能だと思います。さながら就活のように、実際に入ってみなければわからないこともたくさんあります。

自然派=不自然派?


子どもに無農薬野菜を食べてもらう方針を掲げる園って多いですよね。
見学したA園は子どもたちの食への関心を高めるために畑で野菜の栽培体験をさせて育てた野菜を給食で提供しているそうです。
子どもたちの口に入るものだから安全なものを食べさせたいので無農薬農法で栽培。給食で使用するそのほかの食材もできるだけ添加物を使わない物を選んでいるそうです。


食品添加物について、基本的に私は大人も子供も国内で流通しているものについてこれといって気にしない立場です。カロリーゼロ食品などに含まれることの多いアスパルテームなど人工甘味料は私が美味しくないと思うので買わないようにしている程度です。

無農薬野菜について、もしそれを妄信的に選ぶようであれば本当にそれがベストなのか、今一度考えてほしいです。
なぜなら無農薬野菜、ぶっちゃけおいしくありません。
「そんなこと知ってるわ!」と言われそうですが、本当においしくない、というか、子ども達にとって食べるにはハードルが高いと思うのです。

想像してください。青臭い人参、筋っぽい小松菜、えぐみが強く「す」の入った大根。大人であればこれらを出されたら我慢するなり味つけを工夫して食べられますが、子ども達は素直ですから、おいしくなければ食べません。でも食べなければ先生に怒られるから泣きながら時にはえずきながらなんとか口に入れます。
そういうネガティブな食体験が果たして子ども達のためなのでしょか。私は何でもおいしく食べる人になってほしいと常に思いながら給食を作りますが、別にあえて苦しい思いをさせたいわけではありません。
子ども達が保育園で過ごす時間はせいぜい6年。それよりもずっとずっと長い時間を子ども達は食べ物と付き合いながら生きていくのに、食べ物との付き合いの入り口であえてつまずかせなくてもいいのではないか、と思います。これだけおいしい野菜を作る優れた農家さんや鮮度のいい状態で手に入れられるよう努めてくださる運送業の方、世界的にみても食品に対して厳しい基準を敷く政府。これらが揃った時代と国に生まれたのですから、その幸せを享受していいのではないでしょうか。


さらに調理面から言えば、無農薬野菜を何とか食べられるように栄養士や調理師はあの手この手を凝らすのですが、たいていの保育園の給食室の設備と時間では子どもの口に合い、仕事として提供できるレベルに仕上げるのはなかなか骨が折れます。家庭であれば、こうした野菜をおいしく食べるのなら手っ取り早いのは味つけを濃くして素材の味を隠すのですが、そてを子ども達に食べさせるのはいかがなものか。
ただでさえ国際的にみても塩分摂取量の多い我が国。大人たちですら減塩を求められる現代に味つけの濃い給食はナンセンスですよね。
あるいは香辛料の力を借りて風味を変えれば素材の欠点を補えるかもしれませんが、刺激の強い調味料はやはり幼児食には不向きです。


優先すべきはまず食べること

安心安全を追い求めるあまりにそれ以外がないがしろにされるのは本末転倒でしょう。幼児食において最優先することは「まず食べてもらうこと」だと思うのです。体がメキメキ成長する子ども達の食べ物はもちろん品質にこだわりたいのですが、食べないことには成長できません。
食材とのファーストコンタクトがその子が一生付き合っていく食事との基盤です。

これを言うと元も子もないのですが正直なところ幼児期の記憶って年を取ればどんどん朧気になり大半は忘れてしまう。そうであれば子どもの頃の食体験が、たのしかった、おいしかったという前向きな思い出になるよう、手を尽くしてあげたいのです。